2026.03.19

食べる・作る・技を継ぐ。猟友会直伝の「猪鍋」と、自由な木工で根羽村の里山を遊び尽くす

2026年3月14日、根羽村の宿泊施設「グリーンハウス森沢」にて、親子連れなど約20名が参加し「猪鍋会」が開催されました。

猪鍋は村のイベントには欠かせない定番メニューで、村民が普段から慣れ親しんでいる味です。しかし、この伝統を支える猟友会の高齢化により、技術の継承が課題となっていました。

一方で、施設の管理団体である一般社団法人ねばのもりは、定期的な「里山体験イベント」の実施を模索していました。こうした状況を受け、管理人の林さんが「伝統技術を直接教わる猪鍋会」を発案。施設の活性化も兼ねたこの企画が、里山体験イベントの第1回として実現しました。

猟友会直伝のレシピを五感で学ぶ

当日は、猟友会の一員で根羽村出身の片桐龍男さんを講師にお招きし、猪鍋の作り方を実践形式で教わりました。片桐さんからは、冬の猪は越冬のために脂肪を蓄えていて格別に美味しいこと、また猟期に入り新鮮な状態で提供や保存ができることなど、猟師さんならではの説明がありました。

調理は、猪肉と野菜を食べやすい大きさに切り分けることから始まります。お肉を切る際のポイントは「焼肉よりは薄く、しゃぶしゃぶよりは厚め」にすることです。切ったお肉は、まず鍋に入れて日本酒で揉み込み、そのまましばらく漬け置いておきます。

その後、肉を漬けていた鍋に水を加え、丁寧にアクを取り除きながら煮込んでいきます。火が通ったところで、こんにゃく、大根、ごぼうを投入。大根が柔らかくなった段階で、いよいよ味付けに移ります。

一般的に、猪鍋は臭みを消すために味噌ベースが多いですが、根羽村の伝統は「醤油ベース」です。これは、猪肉が極めて新鮮であることや、丁寧な下処理があってこそ。

調味料の具体的な分量を尋ねると、片桐さんは大きなボトルから「これくらいか」と豪快に鍋に調味料を投入。肉の質や水の量によって最適な配合が変わるため、決まった分量というものはないそうです。

「醤油がもう少しいるかな」「これくらいがちょうどいい」と、参加者も片桐さんと共に何度も味見を繰り返し、煮汁の色の濃さを見ながら、感覚を頼りに微調整を重ねていきます。その一連の過程を通じて、参加者の皆さんは伝統の味を「舌」と「目」で覚えていきました。

伝統の味に舌鼓、受け継がれる根羽の食文化

煮込んでいる猪鍋から良い香りが漂い始めた頃、片桐さんが持参した味付け猪肉をフライパンで焼き始めました。会場にはさらに香ばしい匂いが広がり、まずはこの「焼き猪肉」を全員で堪能。その美味しさに、本命の猪鍋への期待も一段と高まります。

完成した猪鍋を全員でお椀によそい、いよいよ実食です。自分たちで手間をかけた喜びも加わり、格別の美味しさとなりました。「醤油でも全く臭くない」と片桐さんが胸を張るとおり、お肉本来の味がしっかりと感じられる仕上がりでした。

参加者からは「普段イベントで食べている時より美味しい気がする」との声が上がり、あっという間に完食。締めには冷凍うどんを投入しましたが、おかわりが相次ぎ、急遽買い出しが必要になるほど。全員でお腹いっぱいになるまで猪鍋を楽しみ、この土地ならではの贅沢な食文化を再認識する機会となりました。

端材を活用した木工体験と創意工夫の数々

片付けを終えた後は屋外へ移動し、木工体験を行いました。会場に用意されたのは、使われなくなった端材と、ノコギリや釘、金槌といった最小限の道具のみです。参加者は端材の山の中からお気に入りの素材を選び、思い思いに製作を開始しました。作業が始まると全員が集中し、道具を貸し借りしたり手伝い合ったりしながら、大人も子どもも夢中になって取り組んでいました。

活動の中では、限られた条件の中で工夫を凝らす様子が随所に見受けられました。シーソーのようにボールを飛ばす遊び道具を作っていた子は、近くで見守っていた大人から「飛ばしたものがバケツに入るようにしてみるのはどうかな?」と提案されると、どうすれば狙い通りに飛ばせるかを必死に考え始めました。土台を安定させるために削りを入れたり、重さを変えたりと、試行錯誤を繰り返しながら調整を重ねていました。

また、金槌が足りない時に端材の竹を代わりに使用したり、木を切りやすい角度を求めて様々な方向からノコギリを試したりと、その場にあるものを活用して課題を解決しようとする、子どもたちの主体的な姿が見られました。

これからの継承と里山体験の広がり

今回の「猪鍋会」は、根羽村の伝統食を次世代へ引き継ぐとともに、グリーンハウス森沢の新たな活用を模索する大切な一歩となりました。猟友会の方から直接「味付けの勘」を教わったことは、数字だけでは表せない生きた文化の継承となりました。

後半の木工体験でも、限られた道具の中で試行錯誤する子どもたちの姿が見られ、「工夫する楽しさ」を共有する場となりました。

グリーンハウス森沢での「里山体験イベント」は、今後も定期的に開催される予定です。地域の伝統を守りながら、多世代が交流できる温かな拠点として、これからの発展が期待されます。

取材・執筆:魚住奈都子