2025.12.26
源流の森から、100年先の循環を編み出す【森を考える会:生産林編レポート】
信州の最南端、根羽村。村の面積の94%を森が占め、そこから流れる水は岐阜県、愛知県へと続く「矢作川」の源流となります。この豊かな森をどう守り、どう活かし、次世代へと繋いでいくのか。
2025年12月2日、根羽村森林組合事務所で「森を考える会」を開催しました。森には様々な役割がありますが、今回は木材を生産し経済を回す「生産林」をテーマとして、現場の最前線で働く林業者、製材業者、山主の皆さん、村で森林に関わる皆さんが集まり話し合いました。
どんな森だと良いか、根羽村の森のいま

矢作川の最初の一滴を生み出す村として、「水を育む森」のための林業のあり方を考えたとき、人口が増えればいいのか?経済が回るといいのか?どういうことがあれば良いのか? 株式会社やまとわの奥田悠史さんから投げかけをいただき、ちゃんと森に手が入っている状態にするために必要なことを考えました。

その後、根羽村森林組合の大久保裕貴さんから、村の面積の94%が森林という話を深堀り、森林全体の73%を人工林が占めることなど村の森林状況のレクチャーをいただきました。
森林面積のうち、個人所有の山林が36%、村有林が32%を占めるという話には、驚きの声が上がっていました。
「最高」と「苦しさ」の先にある、林業のリアル

「今の現場で『最高だ』と思う瞬間と『ここが苦しい』と思うことをテーマにしたワークショップの第一部では、現場で働く皆さんの想いや森林と関わってきた源体験があふれ出し、活気あふれる場になりました。
「難しい現場をうまく搬出できたとき」や 「曲がった木を真っ直ぐな製品へとテクニックで製材できたとき」、「山主さんに『良い風にやってくれてありがとう』と言われたとき」、モミガラや季節のかおりを感じる時、喜びを感じる瞬間には思わず深くうなずいてしまいます。
そんな「最高だ」と思う瞬間の裏側には、切実な「苦しさ」も同時にありました。
「木を切ること自体、手続きが大変だったり道から遠かったりで難しい」、「いくら良い木を育てても、市場価格が上がらない」、「山主さんに『なんでこんな風に切ったの』と言われたとき」など、森林とそこに関わる人と真摯に向き合うからこそ吐露される話もありました。
源流の生産林で見る未来

「源流の村としてどんな生産林づくりを実践出来たらいいだろう?」
「もし予算や手間の制約がなかったら、どんな森にしたいか?」
「源流の村の林業として社会からどう評価されたいか?」
第二部では3つの問いに対し、第一部の勢いそのままに、こんなことが出来たら本当は良いよねという話が飛び出しました。
水源の森として根羽村独自の施業をする、根羽の森を大切に思ってくれる「買いたい人」に届けたい、無茶ぶりに対応できる製材所になる、山や川の恵みによっておいしい森・楽しい森に出来ないか、今の山に対して関心を向けて森と人との関係性を作っていきたいなど、それぞれのグループから特色ある話がありました。
資産としての森林
生産林を考える時、森そのものと関わり方とにそれぞれ目指したい姿があることを感じる会となりました。
かつては投資として見てきた山を今は資産だと思う人も負債だと思う人もいて、そう思う理由にもバラバラの背景がありました。
山主が孫の代を想い山を育て、子供たちが森で学び、職人が誇りを持って美しい材を送り出す。そしてその森が、清らかな水を下流域へと届けていく。
豊かな森のあり方、上流における生産林のあり方を見つめなおし、チャレンジしたい、出来るんだという機運を作り出していくきっかけとなる場になりました。
