2025.11.04

根羽村で育む、自然への理解と人の成長がつむぐ未来のかたち―地域と企業が紡ぐ「森づくり」の歩み

自動車部品製造をはじめ、多様な事業を展開するアイシングループでは、グループ全体が水の恩恵を受けている矢作川の源流域の保全のため、2004年に根羽村と「森林の里親契約」を締結し、その中で水源涵養※1やCO2削減に繋がる「森林の里親促進事業」を支援しています。

その活動の一環として、2025年も10月25日(土)に約70名が根羽村を訪れ、ネバーランド(売店や飲食店などの複合施設)およびハッピーマウンテン(幸山明良さんが牛を放牧している山)にて「人と森をつなぐ森づくり活動」と題したカーボンニュートラル社会に貢献するための植樹自然に触れ合うイベントが開催されました。

ハッピーマウンテンでは約90本の苗を植樹したり、環境学習やネイチャービンゴを通して森について楽しく学んだり、豊かな時間になりました。

※1 森林が雨水や雪解け水をスポンジのように土に染み込ませ、地下水として蓄え、ゆっくりと川へ供給することで、良質な水を育み、洪水や渇水を緩和する働きのこと

森を伝える、未来を育てる

まずはネバーランドの芝生広場で、森や里山について学ぶ、環境学習を行いました。 2022年からこのイベント企画に携わっている幸山さんによると、「森の現状を理解してほしい」、「子どもたちにわかりやすく課題を伝えるにはどうしたらいいか」という想いから、ストーリー性を持たせた大きな布芝居という形になったそうです。

当日は、布芝居の周りに子どもたちが集まり、真剣な表情で話に耳を傾けていました。 このイベントには毎年、信州大学農学部の学生もスタッフとして参加しており、今年も布芝居は学生たちが演じました。「人前に立つことは苦手」と話す学生もいましたが、一生懸命ステージ上で語る姿が見られました。

布芝居の上演後は、信州大学農学部の城田先生にマイクが渡り、専門家の目線から今回植える木や里山についての説明がありました。

幸山さんは、「参加しているアイシングループの皆さんに森への興味を持ってもらうことももちろん大切だが、このイベントが学生の経験の場となり、人材育成の観点からも社会貢献につながれば嬉しい」と話していました。

植えることは、守ること

森や里山について理解が深まった後は、実際に山へ移動して植樹をしていきます。 まずは、鍬やスコップなど植樹に使用する道具の使い方や注意点について説明を受け、植樹の手順を学びました。土を平らに掘り、苗を植え、土をかぶせて踏み固める。その後、乾燥防止のためにバーク(樹皮)を敷き、芝を這わせることで、雨による土の流出を防ぎ、里山の保全につながることを学びました。

このように、作業の意味や理由を事前に理解することで、実際の作業で迷うことなく、意義を感じる植樹活動となりました。 企画した皆さんの「今年は苗を多く植えることよりも、1本1本をきちんと植えて、確実に育つようにしたい」という想いのとおり、参加者が1本ずつ丁寧に向き合う姿が多く見られました。

また、昨年から引き続いて参加された方も多く、「去年植えた木は育っているかなぁ」といった声も聞かれました。「去年楽しかったので、今年は後輩を誘って一緒に来た。来年も参加したい」と話す方もおり、継続的な参加が根羽村とのつながりを深めている様子がうかがえました。

森を探して、森を知る

お昼ごはんの後は、ネイチャービンゴの時間です。 ビンゴカードに描かれた「森にあるもの」をハッピーマウンテンで探しながら、グループごとに散策を楽しみました。カードには、探す対象のヒントや豆知識も記載されており、ただの遊びにとどまらず、森への興味や理解を深める工夫が凝らされています。

「森とともだちになろう」という今回のテーマについて、企画者の1人である幸山さんは、「ともだちになるためには、まず相手を知ることが大切」と考え、今年新たに「もっと深く森を知ろう」「森とともだちになるために」といった項目をカードに追加したそうです。

最初は大学生スタッフなど各グループのリーダーがさりげなくビンゴの答えに誘導していましたが、次第に子どもたち自身が「あっちにありそう!」「これ見つけた!」と自発的に動き始め、森の中での発見を楽しんでいました。

ハッピーマウンテンで過ごすうちに、カードに載っていないものにも興味が湧き、途中で幸山さんからの解説も加わったことで、子どもだけでなく大人も夢中になっていました。

ビンゴを達成した人には、クロモジとニオイコブシの生キャラメルが配られ、大好評でした。

人が森を育て、森が人を育てることで未来を紡ぐ

今回のイベントは、森を学び、守り、楽しむという三つの体験を通じて、人と自然の関係を改めて考える機会となりました。森の現状を知る布芝居、丁寧な植樹作業、そしてネイチャービンゴでの発見は、子どもから大人までが主体的に森と向き合う時間を生み出しました。継続的な参加者の交流や学生スタッフの挑戦も加わり、単なる自然体験にとどまらず、人材育成や地域との絆を育む場として広がりを見せています。

森を育てることは人を育て、未来を作ることにつながります。この活動は、持続可能な社会を支える小さな一歩となったのではないでしょうか。

取材・執筆:魚住奈都子