2025.09.30
都会で森を体感し、森と暮らす人の声に耳を傾ける。そんな出会いから生まれる新たな視点とは──名古屋と根羽がつながる1日

2025年9月21日、愛知県名古屋市の久屋大通公園シバフヒロバおよびFabCafe Nagoyaにて、「森との暮らしLAB」が開催されました。
根羽村の森の遊びを都会で体験できる「#1森と遊ぶ」には約50組の親子が参加し、森とともに生きるあり方をテーマとした「#2森の対話会」には森に興味のある学生や根羽村に移住を考えている方など15名の参加がありました。
本企画の発案者である野原かほりさん(根羽村地域活性化起業人)は、祖父母の家が根羽村にあり、幼少期から何度も根羽村に足を運んできました。愛知県を流れる矢作川源流域にルーツを持つ野原さんの「源流域(川の始まりの場所)の多様性や本質を都市圏の人にも知ってほしい・つなげたい」との思いから今回のイベントは実施されました。
都会の真ん中で森と出会う

「#1森と遊ぶ」では、主に根羽村から運搬した丸太を活用し、子どもたちが自由に遊べる場づくりを行いました。
参加費は無料としつつ、参加希望者の保護者の皆さまにはLINEオープンチャットへの登録をお願いし、登録者には紙製のリストバンドを配布して受付を行いました。これにより、参加者数を正確に把握できるようになったほか、今後のイベント情報を直接お届けできる体制が整い、新たな関係人口の創出にもつながることが期待されます。実際に、春以降に制作予定の「森とつながる体験コンテンツ」の告知を同チャットで行う方向で準備を進めています。

会場では、丸太を並べて転がす「丸太ボウリング」、紐を引っかけて引っ張る「丸太引き」、木の端材を使った工作、薪割りなど、複数の体験型ブースが設置され、いずれも終始盛況でした。

イベント開始直後は、野原さんの友人やFabCafe関係者の参加が中心でしたが、次第に一般来場者も増え、今回根羽村の存在を初めて知ったという方々も多数参加しました。 複数のブースを回って長時間遊んだ子もいれば、気に入った一つのブースで集中して過ごした子も見受けられました。
森と暮らすということ

「#2森の対話会」では、野原さんをファシリテーターに迎え、トークイベントを実施しました。1組目「森で生きる編」では、中西諒さんと幸山明良さんが登壇されました。
中西さんは、愛知県でカメラマンとして活動した後、テントサウナができる「綺麗な川」を探す中で根羽村と出会い、夫婦で移住しました。「森を守りたい」という意識はなく、当初は森への関心も薄かったと率直に語りました。現在は古民家と周辺の土地を整備し、森の中でテントサウナとキャンプ場を運営しています。
幸山さんは、熊本県で牧場を営んでいましたが、熊本地震をきっかけに根羽村へ移住し、村の山で牛を放牧する山地酪農を実践しています。現在は、山地酪農だけでなく、山や自然に関する約50のコンテンツに携わっています。その1つとして狩猟も行っており、「命をいただく」という行為についても言及しました。
「自然との一体感」について問われた際には、中西さんから「奪うぐらいのつもりで来たが、自然の中で生かされている感覚になった」との言葉がありました。幸山さんは、昔の田舎の生活への憧れや、現代における自然への敬意の希薄さに触れ、「自然の中で何かをするには時間がかかるが、変化して豊かになっていくことが面白い」と語りました。
都市と源流域をまたぐ実践

2組目「森をつなぐ編」では、東海旅客鉄道株式会社の吉澤克哉さんと、一般社団法人ねばのもりの杉山泰彦さんが登壇されました。
吉澤さんは、JR東海で人事や新規事業の立ち上げを担当された後、会社非公認のワーキンググループから共創型ローカルメディア「conomichi」を立ち上げました。駅の有無に関わらず複数の地域と連携し、地域の人と共に事業を進める「共創人口」の創出を目指しています。「森で活動する人々のあり方に魅力を感じ、彼らと面白いことをしたい」という思いで事業に取り組んでいます。
杉山さんは、転勤や出張の多い生活を経て、暮らしの新しいステージとして夫婦で根羽村に移住しました。「村心地をよくする」ことを目的に法人を設立し、地域内外の人をつなぐ場づくりを自身の役割としています。根羽村には動ける人材が多く、都市部にはニーズがあるとし、その接続を担っていると語りました。
地域の価値に関する問いには、吉澤さんが「地域資源の再読と余白の見せ方」、杉山さんが「フットワークの軽い、やる気のあるチームの存在」を挙げていました。
森と人との関わり方の可能性

今回のイベントでは、「都会の人と源流域をつなぐ」という野原さんの企画意図が、実際の参加者層によって具体化されました。企画・運営側としては、丸太などの木材を用意するだけで子どもたちが何時間も遊び続ける様子が見られ、素材の持つ力や自由な遊びの可能性を改めて認識する機会となりました。
また、イベントを通じて参加者同士や関係者間で新たな人脈や企画の動きが生まれつつあります。今後も都市と源流域の接点を広げる取り組みを継続していく予定です。
取材・執筆:魚住奈都子